▼教師をしていると,同じような現象に出合います。
子ども対応でも,授業でも,学級づくりでも,同じような現象に出合うのです。
そのとき,どう対応するかは,過去の反省の上で,試行錯誤しているはずです。
過去の記録があると,あのときは失敗したので,今度はこうやってみようとか,
こうすると成功したので,今回もこのように対応しよう,と思うのです。
やがて経験を積むと,一つの法則なり,原理なり,原則なりに気付くようになります。
こうやって学びとった「知恵」は,多くの人にも役立つことなのです。
▼問題は,「知恵」というのは,多くの場合,「数多くの失敗を伴って得たもの」であることです。
何年も失敗して,ようやく「うまくいく方法」を見つけることができるわけです。
だから,本当は,「知恵」を紹介するときに,「失敗談」も一緒に説明した方がよいのです。
その方が,「知恵」を実感として理解できるからです。
ただ,失敗を話すのは誰でも嫌なものです。
▼そこで,「知恵」だけを紹介することになるのですが,これが実に味気ないものになることが多いのです。
「子ども一人一人の声に耳を傾けることが大切だ」とか,
「一人一人の子の人格を尊重しよう」とか,
そういった「言葉」になるのです。
本当は,この言葉の裏に,数多くの失敗談があるのです。
しかし,教える方は,いちいち自分の失敗談を話すことはしません。
失敗談ではなくても,何らかのエピソードと一緒に話すと,聞き手は実感をもって理解できるはずなのです。
▼教師なら誰でも,自分の教師生活を通して,「これだけは実感として心から言える」という「知恵」をもっていると思っています。
ベテラン教師はもちろんのこと,若い教師も知恵をもっています。
それらの知恵を,みんなで共有したい。そう願っているのです。
ベテラン教師は,「教えてください」と頼まないと,なかなか「知恵」は教えてくれません。
「教えてください」と頼んでも,なかなか教えてくれない知恵もあります。
それは,プロだけがもつ「知恵」です。
どんな知恵でも,どの人も知ることができる。
そういう状態をつくりたいと思っています。
▼プロの知恵をできるだけ,公開したい。そう思って様々な著作を世に出しています。