◇現場で教えていた頃,
大学の先生の授業を、何度も見る機会がありました。
現場の教師の前で授業をするくらいですから,著名な方が多くいました。
1年間、小学校で講師として教えた経験をもっている人もいました。
大学の教師が、小学校現場に来て、授業をしてみる。
それも1年間も、です。
ある研究会で,1年間授業をしてみての感想を、その教授が言われていました。
「小学校の授業がこれほど難しいとは思いませんでした。」
教えてみないと、わからないのです。
現場で、子どもに教えてみれば、一発でわかります。
「授業とは何と奥深く、難しいものであるか」が、です。
教えた経験がなければ、授業の奥深さや難しさは「実感としては」わかりません。
◇若い教師に聞くと、やはり、「授業が難しい」という感想を言います。
何をしていいのかわからない。
子どもが退屈そうにしている。
そうなのです!
授業とは難しいものなのです。
やり方を知れば、誰だってできます。
やり方を知らなければ、誰にもできません。
知れば簡単なことなのです。
理解するだけなら,5分でも可能な教育技術は,いっぱいあります。
問題は、やり方を誰が教えるのか、という点です。
◇これも,ある研究会に参加したときのことです。
小学校の教師が、大変に、すばらしい授業をしました。
私が見ていて、たった5分間に、ざっと20〜30の教育技術が使われていました。
もっと本気で分析すれば、おそらくは、50ぐらいの教育技術は抽出可能でした。
授業を見る目がある人なら,誰だって抽出は可能です。
これは,授業を見る目をもっている私がすごいのではありません。
授業技術を知っておけば,誰だってできます。
単にそれだけの技術を知っているということに過ぎないのです。
とにかく、授業技術がちりばめられた、文句なくすばらしい授業でした。
さて、指導講評の時間になりました。
指導講評をしてくれるのは、大学教授の方々。
その授業を見た大学教授が言いました。
「おじょうずですね。授業が。」
心の中にわき起こっていく白々しさを抑えられませんでした。
「小学校だからって、授業が簡単だと思っているのかなぁ・・・?」
指導講評で、次の大学教授も、「テンポがよくてお上手でしたね。」と。
テンポの良し悪しも、自分で小学生に教えてみないと、絶対にわかるはずがないのに・・・、とやはり思ってしまいました。
◇その点、一年間の期限付きとはいえ、現場に出て授業をした経験をもつ大学教授は言うことが違いました。
要旨、「授業の技術的な点は、わからなかった。ただ、授業というものは奥深く、小学生に教えるのは、大変に難しい。」と言われたのです。
授業について、実感として語れる教授が増えれば、きっと学生も授業の知識がもっと増えると思うのです。
新卒教師が、4月に学級で、授業に苦しんでいます。
日本全国、同じ状況です。
これに、おかしさを感じなくてはならないと思います。
悪いのは、新卒教師なのでしょうか?
単に授業の技術を知っておけばよいのです。
古今東西の授業技術をまとめた書(例えば,拙著「授業成功のゴールデンルール」のように)が必要なのです。