『学級担任が進める 通常学級の特別支援教育』
大前暁政(著)

◇文部科学省は,10年ぶりに,「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童・生徒に関する調査」を行うことを決定しました。

 2002年の調査では,通常学級に通う小中学生のうち、「知的発達に遅れはないが、学習面や行動面で著しい困難を持つ」と担任教師が判断した割合は6.3%でした。

 2012年に発表された調査結果でも、全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、人とコミュニケーションがうまく取れないなどの発達障がいの可能性のある小中学生が6.5%に上ることが明らかとなりました。

 通常学級30人なら,2人の割合になります。

 
◇発達障がいへの理解は,ここ数年ずいぶんと進みました。
 
 例えば,2010年の独立行政法人日本学生支援機構の調査では,発達障がいをもつ大学生は1064人(全国の大学・短大・高等専門学校計1220校)で,調査を始めた5年前の8倍超であることがわかりました。

 なぜ8倍超にまで増えたのでしょうか?

 その理由を,日本学生支援機構は,「学校側の認識が深まった結果」としているのです。


◇文部科学省の調査結果では,発達障がいの可能性のある小中学生は,6.5%の割合でしたが,他の調査結果では,10%を超えるものもあるのです。

 つまり,どの人でも,学級担任となれば,特別支援教育の知識は必須となります。

 新卒教師は1年目から,学級担任を任されます。

 偉人にも,発達障がいをもつ人が多いのは,よく知られているところです。

 その子が,望ましい成長をしていけるかどうか。
 
 学級担任の影響はとても大きいと言えます。

 才能をくれぐれもつぶさないように,才能を伸ばす責任が教師にあるわけです。


◇では,一体どういった知識を学んでおけばよいのでしょうか。

 
@発達障がいそのものの理解。(理論)

 Aそれぞれの発達障がいに対する具体的な対応の理解。(方法)



 文部科学省は,次の3つの項目を調査しました。 

(1)<「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」>
(2)<「不注意」「多動性−衝動性」>
(3)<「対人関係やこだわり等」>



 これらの特性が,どの障がいにあたるのかを理解できているかどうかが,「理論」になります。


 そして,その理論を知ったとして,では,どういった対応をすればよいのかを理解するのが,「方法」の理解になります。


◇具体的な「方法」を知っているのは,やはり現場の人です。

 よりよい成長を子どもがしていくためには,「方法」まで知らないといけないのです。

 自閉症をもち,動物学の分野で成功を収めたテンプル・グランディンは言っています。

 「最悪の対応は放置」だと。


 エジソンのような天才を,退学させるような愚は,現代の教師ならばできません。

 教師ならば,全員が,特別支援に関する理論と方法を知っておかなくてはならない時代がやってきたのです。


出版社:黎明書房、単行本:180ページ
発売:2012年1月30日amazonで確認
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